スポーツ選手に多く見られる疲労骨折のひとつに、脛骨、腓骨以下の足部を構成する骨のひとつである中足骨の疲労骨折がある。
中足骨とは足の指の根本部分にあたるMP関節と基節骨と接続するPIP関節間にある足部を構成する五本の骨で構成されている骨の事である。
中足骨の疲労骨折が発生すると主に足背部(足の甲部分)に少しずつ痛みを感じるようになり、放置して運動を続けているとやがて強い痛みを感じるように症状が少しずつ悪化していく特徴を持っている。
中足骨疲労骨折は主に10代の子供に多く発症する障害であるが、運動強度の高いスポーツ競技や、足部に継続的に負荷が加わるスポーツ競技を実践中のアスリートの中には20代・30代でも発症が見られる割りと身近な骨折症のひとつである。
病院で診察を受けるまでに至らなかったとしても、一定期間に渡り足の甲部分に痛みを感じていた経験をお持ちの方も意外と多いのではないだろうか?
その時の足の甲の痛みは、もしかしたら中足骨疲労骨折の前兆段階であった可能性も考えられる。
ここではスポーツ選手であれば誰もが発症する可能性を持つ中足骨疲労骨折の発症原因と治療法について確認しておこう。
中足骨の疲労骨折を発症する原因はいったいどのような原因が考えられるのだろうか?
ここではまず、足部を構成する骨格と骨の構造についてチェックしておこう。
足部を構成する骨は踵部分にある踵骨に接続するアキレス腱以下の部分に存在する足根骨と呼ばれる7つの骨と足の指を構成する19個の骨が接続する形で構成されている。
足の指を構成する骨は5つの中足骨、基節骨、末節骨と4つの中節骨で構成されており、中足骨は我々の目で外部から見た場合にちょうど足の甲部分に存在することが図を見ると解るだろう。
中足骨の疲労骨折を発症している場合は、この足の甲部分に腫れ症状や痛みを感じるようになる為、まずは足部の構成を把握し中足骨がどの場所に配置されている骨であるのかを把握しておくことが重要となってくる訳である。
例えば、子供が「シューズを履くと足の甲が痛い」と訴えてきたような場合は、まさしく足の甲部分に疲労骨折、もしくは疲労骨折の前兆とも呼べる炎症症状を発症している可能性が検討できる。
外部的な打撲や打ち身などの症状もなく、子供が足の甲に痛みを訴えるケースの多くでは、中足骨への負担が大きくなっている可能性が検討できるという訳だ。
疲労骨折はその名の通り、疲労性の骨折であるため、使い過ぎや負担が継続的に加わることで最終的に骨折症状を発症する骨折である。
転倒時などに発症する突発的な骨折とは異なり、日々の疲労の蓄積が原因となってくるため、外部の第三者はもちろん本人も骨折の発症に気がついていないケースも多い。
尚、中足骨の疲労骨折を発症する最大の原因は足裏のアーチ構造のつぶれや、繰り返しの衝撃による筋肉疲労が要因となって発症するケースが大半である。
跳躍動作の着地動作やランニングなどの着地などの地面との接地の際に、足部は重力によって自分の体重の衝撃を全て受ける部分でもある。
この衝撃を緩和する為に足のアライメントはアーチ構造となっており衝撃を緩和しているが、衝撃が継続的に加わり続けるとアーチ構造を構成している筋肉群に疲労が生じ、十分な衝撃吸収能力を発揮できなくなってくる。
その為、中足骨の中でも最も負担が加わりやすい第3中足骨、第2中足骨に疲労骨折を生じやすくなってくるのである。
足の甲に強い痛みを感じる場合の治療法について確認しておこう。
まず足の甲に違和感を感じるような場合は既に患部に炎症を生じている可能性がある為、応急処置治療としてまずアイシング処置を行う。
アイシング処置を行なうと痛みは一時的に緩和されるが、そこで運動は再開せずにその日は安静を保つように心がける事が大切。
もし痛みの引いた次回の練習時に痛みが再発するようであれば、やはり疲労骨折の可能性が検討される為、速やかに整形外科でレントゲン検査を受けるようにしよう。
また既に足の甲に腫れが見られるケースや痛みがかなり強いような場合は直ぐに運動を中断し、やはり骨折の有無を確認する為に病院の診察を受ける事が大切である。
病院では運動の継続が許可されるケースもあるが、運動制限の指導を受けるケース、そして直ちに運動を中断し治療を開始すべきケース等、症状の程度によって治療方針の指導を受けることになる。
実際の治療では安静を保ちながら症状の回復を見込む自然治癒力を根底とする治療が基本となり手術などを行なう事はまずない。
レントゲンで明らかに骨折がはっきりと映るケースではギプス固定を行なう事もあるが、多くは安静を中心とした保存療法による治療を行なう事になる。
中足骨の骨折や変形によって炎症症状を発症し痛みをもたらす障害のひとつに中足骨骨頭痛(中足骨骨頭部痛)と呼ばれる足裏の痛みを伴う疾患がある。
この疾患は文字通り中足骨の骨頭部先端に痛みを生じる疾患で足裏の親指から小指の付け根から土踏まず部分の拇指球を中心とした範囲に痛みを生じる疾患である。
中足骨の疲労骨折の大半は男性に多く発症するが、中足骨骨頭痛の場合は女性に多く発症し、足裏のアライメント障害や外反母趾などが原因となって痛みを生じる。
女性スポーツアスリートの場合は、過度の運動によって足裏のアライメント構造が変形し、外反母趾症状も悪化してしまうケースがあり拇指球近辺に激しい疼痛を発症するケースも多い。
治療の基本はインソールなどの衝撃緩衝材を含む装具を利用する方法やシューズを自分の足の形状に合わせてオーダーする等、幾つかの方法がある。
尚、中足骨の痛みは従来の足裏全体に敷き詰める衝撃緩衝材タイプでは靴の内部が窮屈になりより痛みを増す原因となることが懸念される。
その為、現在は足裏への荷重圧力を均等に分散し足の甲から拇指球近辺の痛みを軽減するように設計された中足骨専用のインソールも開発されている。
但し、やはり最終的には根本的な外反母趾症状の治療を行わない限り改善されない難しい疾患でもある為、アライメント障害は軽視できない疾患であるとも言える。
中足骨疲労骨折は足背部(足の甲)、骨頭痛は足裏拇指球近辺と痛みの生じる場所に特徴がある。
どちらも多くのスポーツアスリートの悩む足の障害であるため、痛みの部位を把握して置くことで、どのような疾患の可能性があるのか?とおおよその予測は立てられるようになる事から、指導者やマネージャーは症状の特徴と痛みの発症部位を把握しておくことが大切である。