『いや~最近太りすぎちゃってね。ランチは抜きにしてるんだよ。』
『それは駄目ですよ~課長。食事は毎日ちゃんと3回とらないと逆に太るらしいですよ~』
ある会社の上司と部下の会話でこんな会話が仮にあったとしよう。
しかし良くこんな話を聞くがいったい本当だろうか?
いきなり結論から言ってしまうとこれは本当である。
と言ってもこのような話は今では誰でも知っている話。
もしダイエットをしようと思うならしっかり食事を取りながらダイエットをしなければいけない。
食事をすると、体内に取り込まれた栄養素はエネルギー源として利用できる状態になるまで細かく分解を始める。
分解作業を担当するのは消火器官。
消化器官は栄養素の分解の為に活発に活動を開始する。
この際、消化の為にエネルギーが消費され体熱を発するようになり体温が若干上昇する。
この人体の反応を「食事誘発性体熱産生」と呼ぶ。
※食事誘発性体熱産生=栄養素の分解時に発生する熱(カロリー)代謝
食事誘発性熱産生は「特異動的作用」・「食事誘発性代謝」また(Diet Induced Thermogenesis)の頭文字からDITとも呼ばれる。
食事誘発性代謝は我々人の代謝活動の中でもトップ3に入るカロリー代謝率を誇るもの。
運動によるエネルギー代謝、日常生活内の基礎代謝、そして食事誘発性代謝。
この3つは非常に効率の良い代謝活動のひとつとなっている。
食事でカロリーを消費する?
何だか不思議なイメージが沸くかもしれない。
普通は食事と言えばカロリーを摂取するものとしてしかとらえていない。
これは間違いではないのだが、ここで代謝の流れを一度確認してみよう。
1.食事
まず口から食品が取り込まれ栄養素が吸収される
2.分解
栄養素を分解する際に消化器系器官が活動し熱が発生する
3.代謝
熱代謝によってカロリーが消費される
食事誘発性熱産生の過程では、以上のような流れでカロリーが消費される。
食事を1回抜くということは、この1回分のカロリー消費を犠牲にすることを指すのである。
その為、しっくりこないかもしれないが、原理的には
※カロリーを摂取しながらカロリーを消費する活動=食事
と言えなくもない。
「食事回数を減らすと太るんだよ。」
だってさぁお相撲さんの食事は2回でしょ?
こんな話を耳にしたことがあるかもしれない。
確かにお相撲さんの食事は1日2回。
しかも1回1回の食事の量は桁違いに多い。
いわゆる「どか食い」の典型的なパターンの食事スタイルがお相撲さんなのである。
お相撲さんが1日の食事回数に制限を加えている理由もまさしく食事誘発性熱産生が大きく関与している。
必要以上のエネルギー摂取をすると体は、万が一エネルギー源が不足した時の為の備蓄として脂肪として体内に溜め込む性質をもっている。
その為、どか食いは効率よく太ることができるので力士にとって都合が良い。
入門したばかりの力士がまず一番最初に取り組むこと。
それは何よりもまず「体を大きくすること」である。
横綱まで上り詰めた白鵬関も入門したてのころは体が小さかった為、とにかくたくさん食べてたくさん寝ることが稽古のひとつだった。
後に彼は数年で、体重が1.5倍以上、身長も約30センチ近く伸び幕内で戦える体を手にし横綱にまで登り詰めた。
もちろん入門したての若手は雑用から晩御飯の鍋料理の支度まで色々とやるべきこともある。
しかし、個人的にまず第一に取り組むことは何よりも体をデカくすることが最優先なのである。
ここまでデカい体を作る必要があるのには理由がある。
幕内ともなると190センチ台、140キロ~160キロ台の力士がごろごろしている。
こんなとんでもないサイズの力士同士が全力で頭からぶつかり合うのが相撲の世界。
体重が重い、体がデカイということはそれだけアドバンテージともなるのだ。
※体の大きさがアドバンテージになる
最近では極端にサイズの大きな力士を見かけなくなったが、以前はハワイ出身の巨漢力士小錦がいた。
小錦関は190センチ弱の身長ながらあまりに横幅が大きく身長が若干低く見えてしまうほどの巨漢であった。
日本人では一時期幕内まで駆け上った「山本山」と呼ばれる力士は、日本人力士で最も大きな体重を誇る力士として注目を集めた。
日本が誇る国技である大相撲はそれほど体重が魅力的な世界でもある。
※力士は体を大きくする為に食事回数に制限を加えている
私の知人のボディービルダーは食生活が非常に規則正しく、またちょっと変則である。
朝食はほぼ毎日サラダとハムエッグとゆでたまごを5~6個。
朝からたまごのラッシュで重そうなメニューだが、胃が強いのかぺろりと平らげる。
そして11時過ぎには決まって必ずホエイプロテインとマルチビタミンサプリメントを摂取。
昼食はサービス業ということもあり不規則だが、大抵1時~2時までの間に丼ぶりものを食べ柑橘類を1個。
4時過ぎにはまたプロテインを摂取する。
6時前にトレーニングジムに到着し、運動前にBCAA系サプリを軽く取ってトレーニング開始。
トレーニング終了直後にジム内でプロテインを摂取し帰宅。
帰宅はだいたい9時を過ぎておりこれからが夕食だが、夕食もしっかり食べて、更に眠る前にプロテインを摂取する。
眠る時間はほぼ毎日午前様である。
信じられないかもしれないが、彼はこんな生活を何年も続けている。
プロテインの摂取も食事として換算すると1日に7~8回の食事を取っていることになる。
摂取エネルギー量は結構な量になるが、彼はこのメニューで体重90キロプラスマイナス10キロ程度の範囲を何年もキープしている。
このサイズになると太っているようにも見えるが体脂肪は10%を切るライン。
決して肥満ではない。
もしこれだけの栄養素を3回の食事で一気に摂取しようとしたなら、おそらく今の体系は維持できないだろう。
食事を小分けにすることで食事誘発性熱産生を上手に利用しているパターンの代表である。
※理論的には小分けにするほど効果が高いと言える
ボディービルダーが食事を小分けにするのは、食事誘発性熱産生の効果を知っての事。
しかし、それだけではなく1回の食事から体内に摂取できるタンパク質量に限りがあるという点もある。
その為、小分けにしなければいけない事情もあるのだ。
尚、食事誘発性熱産生によって発生する代謝は「摂取する栄養成分」によっても代謝量が変化することが確認されている。
中でも最も効率よく熱を発生するのはここでも「たんぱく質」系のアミノ分子構造をもつ成分。
BCAAに代表されるようにアミノ酸の熱代謝はやはり運動だけでなく、食事誘発性熱産生に関しても優位に働くことが確認されている。
※DIT代謝が最も大きいのはタンパク質
また、逆に最も代謝が低い栄養素もやはり「脂肪」である。
これはタンパク質を意識した食事メニューへ変化させることで、「DIT」の代謝能力をコントロールすることも可能であると言える。
食事誘発性熱産生の仕組みを考慮して、ダイエット時の食事を考えた場合。
まず食事回数をあえて増やし、1回の摂取量を減らすと良い。
この理由はここまで見てきたらわかるだろう。
「どか食い」をせずに出来る限り小分けにする。
こうして少しずつ栄養成分をしっかり補給しながら、かつ食事誘発性熱産生によるエネルギー代謝の恩恵もしっかり受ける。
また、食事で摂取する栄養成分は、最も代謝能力を高める働きをもつ「たんぱく質」を意識した食事となるよう献立を考えてみよう。
炭水化物はダイエットの敵とも言われるが、炭水化物は脳の働きに直接関与する糖質の元。
最低限の摂取は必要である。
また脂肪分は食事誘発性熱代謝の効果を半減させる。
その為、脂質を多く含む食材やメニューをどうしても摂取したい場合は、1日のどこかひとつに脂肪分を摂取する枠を設けるなどしてダイエットメニューを組むとよいだろう。
毎回の食事で脂肪分をしっかり摂取していると、毎回の誘発代謝量を減らしてしまうことに成りかねない。
※脂肪分の摂取はタイミングを重視しよう!