握力を鍛える方法は存在するのだろうか?
握力と腕の太さの関連性はあるのだろうか?
何となくわかりづらい握力と言う測定項目についてチェックしてみよう。
「握力」とは、物や対象物を握り締める力のこと。
誰もが体育の時間に「体力測定検査」を実施したことがあるはずだ。
これは文部科学省が定めている運動能力調査の為に実施されている統計データを図るテストである。
毎年、一定の基準で統計データが測定されその年齢の運動能力調査が発表されている。
運動能力調査では、この握力の他にも幾つかの測定項目がある。
◆握力
◆反復横とび
◆20メートルシャトルラン
◆上体起こし
◆垂直とび
◆背筋
◆立位体前屈(長座体前屈のケースも多い)
◆持久走
◆50メートル走
◆立ち幅跳び
◆ソフトボール投げ(ハンドボール投げ)
◆開眼片足立ち
◆10メートル障害物歩行(行わないケースが多い)
◆6分間歩行
この他、スポーツアスリートの場合は「閉眼片足立ち」やボールを使用した「ジグザグドリブル」や鉄棒の「懸垂」などの測定を行った選手もいるかもしれない。
握力はこれらのたくさんの指標となる運動能力を測定する項目のひとつ。
尚、毎年公開されている文部科学省の平均統計データを見ていると、握力と言う数値は急激に変化するような数値ではなく、ある程度年齢や性別によって平均範囲が定まっていることがわかる。
以下に今までの数年分のデータをまとめてみた。
かなり大雑把ではあるが年代別の握力平均値、男性・女性別のおおよその握力の平均値がわかると思う。
尚、更なる詳細は文部科学省のホームページをチェックしてみることをお勧めする。
【年齢・男性・女性別握力平均値表】 | ||
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年代 | 男性(kg) | 女性(kg) |
小学生低学年(1~3年) | 9~15 | 8~14 |
小学生低学年(4~6年) | 16~25 | 15~24 |
中学生 | 30~40 | 24~26 |
高校生 | 40~44 | 26~28 |
成人(20~40台) | 45~48 | 28~29 |
シルバー | 42以下 | 26以下 |
普遍的なことは男子の握力数値が女子を下回る年代がないこと。
これは単純に男性の方が平均的に握力が強い事を示すが、幼少期から小学生にかけては実はその差はほとんどない。
大きく差がでてくるのは中学生になってからである。
また、成人期に入ると男性も女性も数値の上昇はほとんど見られなくなり、なかなか握力の平均数値も低下してこないこともわかる。
あまり興味があるものではないかもしれないが、「握力を強化したい!」と思っているアスリートもいるかもしれないので、今日は握力の鍛え方について考えてみたい。
結論から言うと握力の強化は可能である。
しかし、他の筋肉と比較すると、圧倒的にトレーニング効果が低い、結果として現れにくい数値が握力数値である点も覚えておきたい。
指は大小幾つもの関節で構成されている。
手の構成は細かい作業を行うことが可能となるように大小様々な関節を繋ぐ靭帯、骨と筋肉を繋ぐ腱などが細かく入り乱れるようにつながっている。
そして握力の基本となる「握る」という動作の筋出力を担っている筋肉は指先や手の筋肉はごく僅かで、大元の筋出力は前腕が行っている。
前腕とは肘から指先にかけての部分。
この部分には、腕橈骨筋(わんとうこつきん)、橈側手根屈筋(とうそくしゅこんくっきん)といった比較的大きな筋肉群が存在する。
これらの筋肉が筋収縮を行い、指先まで各関節をまたいでつながり最終的に物を握るという動作が完成される。
前腕の仕組みを理解するには自分の腕を触ってみるのが手っ取り早い方法だ。
1.前腕部分を手のひらで大きく掴む
2.強く握りこぶしをつくる。
これだけで前腕部分の盛り上がりが手のひらに伝わってくるはずだ。
この事が分かれば握力を強化する為に必要なトレーニングは2種類あることが見えてくる。
ひとつは、微力ながら活躍する指先や手の小さな筋肉群の強化。
これは掴むと言う動作に慣らせる為にも必要だ。
筋力トレーニングをスタートしたばかりのビギナーは、例えばベンチプレスなどをした場合に、初めての時は自分が持っている筋力分のバーベルを持ち上げることがまずできない。
これは大胸筋の筋肉の出力方法に慣れていない事が要因にある。
実際、2回目の測定では極端に数値が上がったりすることがよくあるが、これは筋力の出力方法に慣れた事が原因であり、実際そこまで筋力はアップしていない。
このような原理と同様で、やはり握力を鍛える際も、「握る」という動作に慣れることが握力強化の大前提となる。
この握ると言う動作に慣れるために必要なトレーニングは以下の2つが適切である。
1.ハンドグリップ・グリッパーなどの器具を使用する
2.ゴムボールを握る
3.懸垂(鉄棒にぶら下がるなど)
非常に古典的なトレーニングではあるが、これらのトレーニングで感覚はしっかり鍛えられるし、筋出力方法もしっかり身についてくる。
そして次いでもうひとつの筋力強化部位は、先ほど確認した前腕筋群の強化である。
前腕の筋肉を鍛える目的は、筋断面積のアップが最大の目的。
これは筋出力は筋断面積に比例するというトレーニングの大原則に基づくもの。
明らかに筋肉もりもりの豪腕を誇るマッチョな人は、見た目だけじゃなく実際に筋力が強い。
これは、その太い腕周りの筋断面積が大きいからである。
もし、前腕の筋肉の強化を行い、太い前腕を作ることが出来たのであれば、その太さに比例して筋力はアップする。
この前腕を鍛えるトレーニング種目はあまりないが、筋肉を太くするという目的に絞って行う場合は以下の2つの種目が適切だ。
1.リストカール(主に橈側手根屈筋を鍛える)
2.リバースリストカール(主に腕橈骨筋を鍛える)
普段から意識して鍛えている部分ではない為、この2種目のトレーニングは慣れるまでに時間がかかる。
しかし、継続的にトレーニングを続ければ、経験上、時間はかかるが少しずつ確実に結果は出る部位でもある。
握力の強化を図るには、コツコツとトレーニングを積み重ねるしか方法はない。
しかも大胸筋や上腕のように見た目にもわかるような効果が出てくるにはかなり時間を要する。
単発で結果が出ない以上は、トレーニング開始前に根気良く数年単位で握力を強化していくということをまずは理解することが大切ではないだろうか?