『ベンチプレスの1RMはどれくらいですか?』
筋力トレーニングジムやスポーツクラブなど、ウエイトトレーニングの話題になると決まったように必ず表舞台に登場する言葉のひとつに「1RM」と呼ばれる言葉がある。
『1RMがなかなか伸び悩んでいるんだよね…』
知っている人ならばわからない話ではないが、1RMの意味がわからない方が耳にすると「?」となるトレーニング専門用語が1RM。
簡潔に述べると1RMとは「1回に挙上が可能な最大の重量」のことを指す。
専門用語だけに意味がわからなかった方もいるかもしれないが、難しいことは何一つない。
但し、用語の意味以上に1RMという概念がトレーニング理論において重要な位置を示すことは是非とも覚えておいて欲しい。
筋力トレーニングに興味のある方、もしくは一度でも筋トレを実践したことがあるアスリートの場合、誰もが一度は「1RM」という言葉を耳にしたことがあるだろう。
では、この「RM」は何を意味するのだろうか?
既にご存じの方もトレーニング初心者の方も含めてRMの基本について一度確認していこう。
筋トレで使用されている1RMや10RMという言葉の「RM」とは、挙上できる最大の重量、すなわちトレーニングで扱うことが可能となるMAXの重さを示す言葉。
尚、1RMの「1」とは、「1回」につき最大で挙上することができる重量を指す。
同様に例えば4RMとなれば当然4回まで挙上が可能な重量(ウエイト)ということになる。
※RMの直訳=「最大挙上重量」
そのため、トレーニング計画をプランする際に4RMはごく単純に5回目は挙上することができない重量をシビアに設定していかなくてはいけない。
例えば、トレーニングジムでは数あるトレーニングメニューの中でも最も最初に行う事が多いトレーニングの基本種目とも言える「ベンチプレス」と呼ばれるメニューがある。
このベンチプレスの場合、4回目までは何とか挙げることが出来るが5回目がどうしても挙げることができない重さがわかれば、その重量は4RMの重量に値する。
と一応推測できるわけである。
※ここで推測と言う言葉を使用する要因は、心意的要因や慣れなどによって正しいRM数値が計上できていない場合が多い為であり理論上は4RMと捉えて問題ない。
聞きなれない言葉であるためトレーニング初心者の方は難しいイメージを持つ方が多いかもしれないが、このように考えると何も難しいことはない。
実は本当に難しいのは、「正しい1RM」を測定することである。
ウエイトトレーニングにおいて、このRM数値を用いたトレーニング理論は基本中の基本である。
ヘビーウエイトを扱うことが多い、瞬発力を必要とする競技アスリートの場合は低回数のRMを使用したトレーニングメニューを組むことが多くなる。
対して、持久力系の競技アスリートの場合は、低負荷高回数のトレーニングメニューを組むケースが多い。
結局いずれにしてもやはりRMを基準としてトレーニングを計画していくことになる。
今では広く知られているRMではあるが、このRMについて長々と解説を加えていくつもりはない。
このRMを用いて、スポーツアスリートや、はたまたスポーツトレーナーや指導者達がどのようにウエイトトレーニングについて取り組んでいくのか?
このようなきっかけづくりとなるデータやポイントをここからはピックアップしていく。
筋力トレーニング、ウエイトトレーニングは、スポーツアスリートにとって今では欠かすことのできないメニューのひとつとなっている。
自分が必要とする体力や運動能力、そして持久力といった各種能力の「基盤」を純粋に高めていくのがウエイトトレーニングの最大の趣旨。
各種スポーツ競技であれば技術的なファンダメンタルドリルが多く存在するように、筋トレは運動能力や身体能力のファンダメンタルドリルの一部とイメージしてもよいだろう。
尚、1RMを使用するトレーニングのポイント及び特徴は大きく分類すると以下のような特徴が確認される。
★やみくもにトレーニングを開始しない
★実践競技に見合ったトレーニング負荷を設定する
★シーズンによってRM値を変更しておこなう
★狙った能力に見合う数値を設定する
要は科学的根拠に基づいたトレーニングを実践していくことが最大の特徴とも言えるのである。
筋力トレーニングは現在では根性論で片づけられるものではない。
『腕立て伏せ100回!終わったら腹筋100回!』
これは、そう遠くない昔、そう20年程前では部活動や地域クラブに所属するスポーツアスリートが当たり前に行っていたトレーニング風景の一部である。
もちろん現在でもこのようなトレーニングを取り入れているアスリートは多い。
このように、非常に高回数のトレーニングを取り入れる目的は、現在では筋力トレーニングという趣旨よりもメンタルトレーニングという趣旨に近いものがあるように思う。
もちろんメンタルを強化することは重要。
一定レベルを超えてきたアスリートが共通して何度もぶつかる壁が、この「メンタル面に関わる問題」であることからもメンタル面の強化は最終的に最も重要な部分であると断言できる。
このような目的を含めて、あえて多くの回数をこなしている選手がいることも事実である。
しかし、ことRM法に関しては、このような根性論的な考え方はいったん置いて、純粋に「現在の自分の能力」と向き合う必要がある。
『どの部分の能力を高めていく必要があるのか?』
『どの部分に多くの負荷をかけていく必要があるのか?』
そこには明確な理由が隠れているはずである。
筋力トレーニングでは自らの現在の状況、改善すべきウィークポイントや大会までの期間など複数の要素を見極めながらプランを設定していく。
このような計画的なトレーニングがRM法を用いるトレーニングでは重要となってくるのである。
また筋肉の細胞はどの程度の期間をかけてどの程度成長していくのか?という時間的な制限と可能性についてもある程度把握しておくべきこと。
これらのある程度の目安は存在するが、やはり最低限の条件として経験に基づく実体験を積んでいくことが求められる。
1RMを使用してトレーニングプランをたてるには、様々なポイントや特徴があるのは前項で解説したとおりである。
ではこの1RMは実際どのように測定し計算していくのか?
ここは最大のポイントであり重要な項目であることは言うまでもないだろう。
トレーニングの実践経験があり1RMをすでに測定したことがある方はいるだろうか?
対象者であった場合、更に最大で1度だけ挙上できる重量をそのまま1RM数値として測定した経験がある方はいるだろうか?
もし1度だけ挙上できた回数をそのまま直接1RMの基準としている場合、あなたは筋力トレーニングのベテラン者である可能性が高い。
仮にベンチプレスをトレーニング種目として選択した場合。
MAXで1回だけあげられる重量が60kgであった場合は、1RMは60kg。
トレーニング経験を積んでいき、徐々に筋力もアップしもし65kgを挙上できたのであれば1RMは65kgへアップ。
このように直接トライして導き出した数値を1RMとして使用していたような場合。
この方法は直接法と呼ばれる1RMの測定方法である。
直接法=ウエイトトレーニングの数値を直接1RMとして使用する測定方法
尚、この直接法による測定は、最も簡易的な測定方法である。
簡易的というのは、測定するまでの過程が易しいという意味。
1RMを測定する方法としては実は最も過酷。
この直接法による測定方法は自らの限界を確認しなくてはいけないことからトレーニングビギナーにはお勧めできない測定方法となる。
また女性などは心理的な限界に達する地点も早く、ウエイトを見るだけで心理的に「無理」と心が受け付けないケースも多い。
そこでトレーニングビギナーや女性でもある程度優しく測定できる計算方法が求められてくる。
そう、当ページのトップタイトルにもある為、既にピンと来ている方も多いかと思うがその計算方法こそが「間接法」お呼ばれる測定方法である。
1RMの測定を誰でもある程度の範囲で的確に求められる測定法がある。
それが「間接法」と呼ばれる相対表によって数値をはじき出す測定法。
1RMの測定を行う際に覚えておくべきポイントは、この間接法を用いる計算表が重要となる。
以下の計算表は丸暗記しても良い。
★90%=4回 ★80%=8回
トレーニングのベテラン者で主に筋肥大や最大筋力のアップを計るトレーニング計画を立てていた方であれば、おそらくこの2点のパーセンテージと回数は暗記しているはずである。
私も細かい数値が飛んでもこの2点の基準だけは忘れたことがない。
これからスポーツトレーナーを目差す場合や、スポーツに関わる仕事をする方の場合は、この表をそのまま丸写ししておくと良いだろう。
本ページをまるまるプリントアウトしても良い。
ヘビーユーザーだけでなく、女性やトレーニングビギナーでも、この表を把握しておくと回数の目安を導き出せる。
1RM測定の計算表/間接法 | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
%RM | 100% | 95% | 93% | 90% | 87% | 85% | 80% | |||||||
反復 回数 | 01回 | 02回 | 03回 | 04回 | 05回 | 06回 | 08回 | |||||||
%RM | 77% | 75% | 70% | 67% | 65% | 60% | 60%以下 | |||||||
反復 回数 | 09回 | 10回 | 12回 | 15回 | 18回 | 20回 | 20回以上 |
赤色で示した部分は最低限覚えておくべき数値。ここを思い出すと周りもおおよそイメージが掴める。
尚、実際に間接法で使用する数値はピンク色で示した部分までが9割以上のはず。
ウエイトトレーニング上級者であれば赤で示した「%RM」が90%~80%の範囲が最も利用しやすく、かつ安全性も高い範囲であると言えるだろう。
実際には90%以上の数値を利用する事も可能だが、安全面からお勧めしない。
また、女性や初心者の方がトレーニングを行う場合は80%~70%の間を意識してウエイトを調整しながら1RM測定を行なっていくと良い。
この範囲はビギナーにとっては間接法の中でも最も数値を導き出すいエリアであり、心理的限界などの影響も受けにくい利点がある。
但し、回数が増えすぎると適切な1RM数値を導き出すことが難しくなるため、70%以下の回数(上記計算表で言えば12回以上のレップ数)が可能な場合はウエイトを増量して回数を基準に8回~12回が限界ラインの重さを探した方が適切な数値を得られる可能性が高い。
総括すると基本的に、1RM測定の計算を自分で行う際はカラーで示した部分の数値だけ覚えておけばおそらくトレーニングをうまくまわせるようになってくるはずである。
間接法は1RMを測定する上で有効な測定方法であると認識されている。
これはMAX重量にこだわらないと言う特性から安全性の面においても言えること。
1RMを間接法を用いて測定するメリットには以下のようなメリットが考えられる。
【間接法で1RM測定を行うメリット】
①初心者でも取り組みやすい
筋力を十分に発揮することに慣れるまではそもそも100%の筋力を出しきれるものではない。その点、間接法は初心者でも実践可能。
②怪我の発症の危険が少ない
直接法では筋断裂などの大きな怪我を発症する可能性がある。
③メンタル的・心理的限界の影響を受けにくい
心理的限界という付加要素はベテランであっても同様に起こりうるもの。その日のモチベーションだけでも数値は実際に異なる。間接法であれば日によってウエイトをダウンするなどしてある程度の平均ラインを導き出しやすい。
④女性でも取り組みやすい
③に近いが、女性にいきなりMAXのトレーニングを強要するのは無理がある。
このように間接法を用いるメリットは多く、特にスポーツクラブなどでトレーナー関係の仕事に付く場合は対象者が女性であるケースが多いので必ず覚えておく必要があると言えるだろう。
トレーニングジムに通う女性の多くは「減量」や「ダイエット目的」のケースで通い始めるケースも多い。
しかし、ジムのトレーニング後に『 みんなで元気にケーキを食べに行ったりしている姿』などを見ていると、微笑ましいのであるが、長期戦になる覚悟が必要になるケースも多いため、無理のないメニューで継続しながら筋肉量を増やし基礎代謝を高めていく方向性へ徐々に導いていくプランが大切な場合も多い。
このような場面では間接法の中でもレップ数の多い数値を意識的に用いながら成長を記録していけば良い。
メリットばかりではなく、逆にデメリットも探してみよう。
中々思い浮かばないが、あえてあげるとするならば
★表を把握しておかなくてはいけない
★公式を把握しておかなくてはいけない
★計算が面倒くさい
というデメリットをあげることができる。
表を持ち歩くのが面倒な場合や忘れてしまった場合は、前項の2点の数値だけでも暗記しておくと対応できるだろう。
1RM法を使用してトレーニングプランを組み立てる場合の知識をここで再度確認しておこう。
筋力トレーニングの基本は負荷の設定がポイント。
扱うウエイトの量によって達成されるパフォーマンスが異なる点は最低限のポイントと理解した上で、1RMについてチェックしていこう。
まず1RMの測定方法には
◆直接法
◆間接法
の2つの測定方法があり、各々メリットとデメリットが存在する。
しかし基本的には間接法を利用することが安全性の観点からも推薦できる。
推奨する要因は前項で解説した通りだ。
特にこれからスポーツに関する勉強を重ねていこうと考えているアスリートは間接法による計算方法は覚えておいて損はない。
もし間接法を用いて測定する場合は、自分が反復できた重量と回数を確認し公式にあてはめるだけでOKだ。
※公式:測定に用いた重量÷%RM
この公式にあてはめて1RMをはじき出す。
では、ここで先ほどの1RM測定の計算表をもう一度見て欲しい。
わかりづらいかもしれないのでもう一歩踏み込んで事例を実際に見ながら計算していこう。
【1RMの測定事例集:端数は四捨五入】
ここまで来るとあなたも1RMを自分自身で計算できるようになってきたはずだ。
慣れてくると親友や友人の1RM数値も簡単に算出できるようになる。
※あとは目的に応じて反復回数を設定し重量を決めていく!
以上が簡潔ではあるが1RMを用いたトレーニングプランを構築する際の流れの基本となる。
最後に目的別のRM値の設定の目安を掲載しておくので参考としてほしい。
目的別のRM値の設定の目安一覧表 | |
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目的 | RMの目安 |
筋肥大 | 6RM~10RM |
筋力アップ | 4RM~6RM |
全般的な筋力アップ | 10RM~15RM |
瞬発力アップ | 20RM~ |