息を吐き出しながら筋力を出力すると筋力を発揮しやすいことは理解した。
更に大声を出しながら筋力を発揮するとより高い出力を発揮できることもわかってきた。前項の「シャウト効果を参照」
では、ここで更に筋出力が高くなる呼吸法について見ていこう。
筋肉の出力は呼吸法によって大きく変化することが見えてくる。
呼吸法がパフォーマンスに影響を与えるひとつの要因は、この「筋出力と呼吸の関連性」というポイントがある為だ。
我々人間が最も筋力を発揮できる状態は息を止めた状態。
重い荷物を持ち上げる瞬間はおそらく誰もが一瞬息を止めている。
息をゆっくり吐き出しながら重たい荷物を持ち上げる人はそういないはずである。
これは呼吸を止めた時に最も力が出ることを無意識に覚えている為だ。
※息を止めると筋力は最大出力を発揮する
ウエイトリフティングなど超ヘビー級のウエイトを扱う競技では一時的に呼吸を止めている選手も多い。
これは一瞬呼吸を止めることでヘビーウエイトが扱える事を経験上知っている為。
呼吸を継続しながらでは扱えないウエイトも、息を止めることで数秒は扱えるようになるのである。
トレーニングでは、1RMの90%近くのウエイトを扱うような場面ではどうしても息をとめてしまう瞬間がある。
1RMの90%と言えば筋肥大や筋力の向上を目的としたトレーニングメニューを行なう際に設定するパーセンテージ。
息を止めてしまうのは、やはりヘビーウエイトとなる分、筋力を最も発揮しやすい無呼吸状態に頼ってしまう為だ。
このように息を止めて筋力を出力することを怒責と呼ぶ。
※トレーニング中に息を止めて力を出すこと=怒責
怒責では呼吸を止めた状態を維持しながら一気に力を出す為、急激に血圧が上昇する。
急激な血圧の上昇は心臓への大きな負担となり、心肺機能にも大きな影響を与える可能性がある。
また急速な血流の変化によるめまいや、場合によっては失神の可能性もある。
最も筋力を発揮できる無呼吸状態は安全性という面ではとてもお勧めできない呼吸法と言える。
怒責(どせき)の効果は確かに高いものがあるが、血圧が急激に上昇するというデメリットを保持している点をしっかり覚えておこう。
※呼吸を止めながらいきむと血圧の上昇を招く